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内科での開業は、多くの医師がキャリアの選択肢として考える道の一つです。自身の理想とする医療を追求できる一方で、経営者としての責任も伴い、不安を感じる方も少なくないでしょう。
本記事では、内科の開業を検討している先生方に向けて、必要な資金、想定される年収、成功に向けた具体的なステップ、そして失敗を避けるための注意点まで、網羅的に解説します。
内科の開業に必要な資金はどのくらい?

内科クリニックを開業するには、物件の取得費用や医療機器の導入費用といった「設備資金」と、開業後の当面の運営費用である「運転資金」が必要です。テナントでの開業か、戸建てでの開業かによって総額は大きく変動しますが、一般的には7,000万円から1億円以上が必要とされています。
テナント開業と戸建て開業の費用比較
テナント開業は、既存のビルの一角を借りて開業する方法で、初期投資を抑えられるメリットがあります。一方、戸建て開業は土地を購入または借りて建物を新築するため、設計の自由度が高いですが、費用は高額になります。
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開業形態 |
初期費用の目安 |
メリット |
デメリット |
|---|---|---|---|
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テナント開業 |
7,000万円~8,000万円 |
初期費用を抑えられる |
設計の自由度が低い |
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戸建て開業 |
1億5,000万円前後 |
設計の自由度が高い |
初期費用が高額になる |
【関連記事】クリニック開業に重要な土地選びのポイントを解説!診療圏調査の方法など|テナント工房メディカル – クリニックの設計・内装デザインならテナント工房メディカル
設備資金の内訳と目安
設備資金には、物件取得費(保証金、礼金など)、内装工事費、医療機器購入費、什器・備品購入費などが含まれます。特に内科では、X線撮影装置や超音波診断装置(エコー)、心電計などの医療機器が必須となり、専門性を高める場合は内視鏡などの高額な機器も必要になります。
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費目 |
費用の目安 |
備考 |
|---|---|---|
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物件取得関連費 |
500万円~ |
保証金 |
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内装工事費 |
2,000万円~ |
設計料 |
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医療機器購入費 |
2,000万円~3,500万円 |
X線 |
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什器・備品購入費 |
500万円~ |
診察台 |
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運転資金の内訳と目安
運転資金は、開業してから経営が軌道に乗るまでの間の費用を賄うために必要です。一般的に、3〜6ヶ月分の費用を準備しておくことが推奨されます。主な内訳は、人件費、医薬品費、賃料、水道光熱費、広告宣伝費などです。開業当初は収入が不安定なため、余裕を持った資金計画が不可欠です。
自己資金はいくら用意すべきか
開業資金の全額を自己資金で賄う必要はなく、多くの場合、日本政策金融公Sや民間の金融機関からの融資を利用します。しかし、融資審査を有利に進めるため、また経営の安定性を高めるためにも、総投資額の1〜2割程度の自己資金を用意しておくことが望ましいとされています。
【参考】:日本政策金融公庫
内科開業医の年収はどれくらい?
内科開業医の年収は、立地や診療内容、経営努力によって大きく異なりますが、厚生労働省の医療経済実態調査がひとつの目安となります。経営が安定すれば、勤務医時代を上回る収入を得ることも十分に可能です。
個人開業医の平均年収
厚生労働省の「第24回医療経済実態調査」によると、個人で開業している内科診療所の損益差額(医業収益から医業費用を引いた額)は、年間で約2,927万円です。これが院長の収入に相当し、年収の目安と考えることができます。これは全診療科の中でも比較的高い水準です。
【参考】:第24回医療経済実態調査 結果報告に関する分析.pdf
医療法人の役員報酬の目安
医療法人化した場合、院長は法人から役員報酬を受け取ることになります。給与費として計上されるため、個人の場合と単純比較はできませんが、経営が順調であれば安定した高収入が期待できます。また、家族を役員にすることで所得を分散し、節税効果を得ることも可能です。
収益性を高める診療報酬のポイント
収益を上げるためには、患者数を増やすだけでなく、診療単価を上げる工夫も重要です。在宅医療や訪問診療は、外来診療に比べて診療報酬が高く設定されており、高齢化が進む地域では特にニーズが高い分野です。また、各種健診や予防接種、禁煙外来などを実施することも収益の柱となり得ます。
内科開業を成功させるまでの10のステップ

内科開業の準備は、構想段階から開業まで1年以上の期間を要することが一般的です。ここでは、開業までのプロセスを10のステップに分けて具体的に解説します。
【関連記事】成功するクリニック開業!開業までのステップやポイントを解説|テナント工房メディカル – クリニックの設計・内装デザインならテナント工房メディカル
ステップ1:コンセプトと診療方針の明確化
まず、「どのような患者に、どのような医療を提供したいのか」というクリニックの根幹となるコンセプトを明確にします。一般内科として地域のかかりつけ医を目指すのか、自身の専門性を活かして特定の疾患に特化するのかによって、その後の全てのステップが変わってきます。
ステップ2:事業計画書の作成
コンセプトに基づき、具体的な事業計画書を作成します。診療圏調査による患者数の予測、収支計画、資金調達計画などを詳細に盛り込みます。計画書は、金融機関から融資を受ける際の非常に重要な書類となります。
ステップ3:開業エリアの選定と診療圏調査
事業計画と並行して、開業エリアの選定を進めます。候補地の人口動態、年齢構成、競合クリニックの状況などを調査(診療圏調査)し、自身のコンセプトに最も適した場所を見つけ出します。
ステップ4:資金調達の実行
作成した事業計画書をもとに、金融機関に融資を申し込みます。自己資金の額や事業計画の妥当性、院長の経歴などが総合的に審査されます。開業コンサルタントに相談しながら進めるのが一般的です。
ステップ5:クリニックの設計と施工
開業物件が決まったら、内装の設計と施工に進みます。患者さんとスタッフ双方の動線を考慮し、コンセプトに合った快適で機能的な空間を目指します。プライバシーへの配慮や感染症対策も重要なポイントです。
ステップ6:医療機器の選定と導入

コンセプトと資金計画に基づいて、必要な医療機器を選定します。新品だけでなく中古品やリースも活用し、初期投資を抑える工夫も必要です。電子カルテの選定もこの段階で行います。
ステップ7:各種行政手続きと届出
クリニックを開業するには、保健所への「診療所開設届」や、厚生局への「保険医療機関指定申請」など、多数の行政手続きが必要です。提出期限が厳格に定められているものも多いため、計画的に進める必要があります。
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提出先 |
主な提出書類 |
|---|---|
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保健所 |
診療所開設届 |
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厚生局 |
保険医療機関指定申請書 |
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税務署 |
個人事業の開業届出書 |
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労働基準監督署 |
労働保険関係成立届 |
ステップ8:スタッフの採用と教育
看護師や医療事務などのスタッフを採用し、開業に向けて教育を行います。クリニックの理念を共有し、接遇マナーや業務フローのトレーニングを徹底することが、患者満足度の向上に繋がります。
ステップ9:集患対策とマーケティング
クリニックの存在を地域住民に知ってもらうための集患対策を実施します。ホームページの開設、Web広告、看板の設置、近隣へのポスティングなど、オンラインとオフラインの両面からアプローチします。
ステップ10:開業前の内覧会の実施

開業直前に、地域住民や近隣の医療・介護関係者向けに内覧会を開催します。院内の雰囲気や設備、院長の人柄などを直接知ってもらう絶好の機会であり、開業後のスムーズなスタートに繋がります。
専門領域別!内科開業の経営戦略
一般内科に加えて専門領域を標榜することで、他院との差別化を図り、より安定した経営を目指すことができます。ここでは、代表的な専門領域ごとのポイントを解説します。
消化器内科で開業する際のポイント
内視鏡検査のニーズが高く、専門性を発揮しやすい領域です。検査スペースやリカバリールームの確保が必要になるため、広めの物件が求められます。苦痛の少ない検査を提供できることをアピールできれば、遠方からの患者獲得も期待できます。
循環器内科で開業する際のポイント
患者層は高齢者が中心となるため、バリアフリー設計や駅からのアクセスが良い立地が重要です。心電図や心エコーなどの検査機器に加え、生活習慣病の管理や指導にも力を入れることで、かかりつけ医としての役割を強化できます。
呼吸器内科で開業する際のポイント
喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)、睡眠時無呼吸症候群など、専門的な治療を求める患者が多い領域です。感染症対策として、発熱外来用の動線を分けるなどの院内設計が求められます。禁煙外来を併設することも有効な戦略です。
糖尿病・内分泌内科で開業する際のポイント
継続的な治療が必要な患者が多いため、安定した経営を見込みやすい領域です。管理栄養士による栄養指導を行うなど、チーム医療体制を構築することで、付加価値の高い医療を提供できます。近隣の病院との病診連携も重要になります。
内科開業で失敗しないための5つの注意点

最後に、内科開業で後悔しないために、特に注意すべき5つのポイントをまとめました。入念な準備と慎重な判断が、成功への鍵となります。
コンセプトを曖昧にしない
開業の軸となるコンセプトが曖昧だと、ターゲットとする患者層がぼやけ、効果的な集患策も打てなくなります。「何を診て、何を診ないのか」を明確にすることが、差別化の第一歩です。
過剰な設備投資を避ける
最新・最高の設備を揃えたいという気持ちは分かりますが、開業当初からの過剰な投資は経営を圧pbacします。事業計画に基づいた現実的な設備投資を心がけ、リースなどを活用して初期費用を抑えることも検討しましょう。
集患対策を怠らない
どんなに良い医療を提供していても、患者さんに知ってもらえなければ経営は成り立ちません。開業準備の早い段階から集患計画を立て、継続的に実行していくことが重要です。
近隣の医療機関との連携を築く
自院で対応できない検査や入院が必要な場合に備え、近隣の病院やクリニックとの連携体制を築いておくことは不可欠です。良好な関係は、患者さんの紹介にも繋がり、経営の安定に寄与します。
頼れる開業コンサルタントを見つける
開業には、医療知識だけでなく経営や法律など幅広い専門知識が求められます。全てのプロセスを一人で抱え込まず、経験豊富な開業コンサルタントをパートナーとして見つけることが、成功への近道と言えるでしょう。
まとめ
内科の開業は、多額の資金と多くの準備を要する大きな挑戦ですが、その先には理想の医療を実現するという大きなやりがいが待っています。本記事で紹介した資金計画、成功へのステップ、注意点を参考に、ご自身の開業という夢を着実に実現してください。
















