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病院やクリニックの内装を考えるにあたって、照明の選び方は非常に重要なポイントの一つです。
照明の選び方次第で院内の雰囲気は大きく変わるため、照明の役割や光源の種類などの基本的な知識を身に着けた上で、ポイントを押さえた照明設計を心掛けましょう。
今回は病院・クリニックの照明の重要性と役割や光源の種類、照明器具の種類、病院・クリニックの照明設計の基本ポイントについて解説します。
≪病院やクリニックの照明の重要性と役割≫
病院やクリニックの照明が重要といわれる理由や、照明が担う役割を4つのポイントに分けて説明します。
一定の基準が定められている
病院では、適切な診断や処置を行えるよう、視認性が重視されます。そのため、照明が明る過ぎる、あるいは暗過ぎることによって医療業務に支障を来さないよう、病院・クリニックではJISによる照明基準が設けられています。
照明基準は明るさの度合いを示す単位のルクスで表され、主な場所ごとに以下のように定められています。
<場所> | <照度(ルクス)> |
手術室 | 750~1,500ルクス |
診察室・処置室等 | 300~750ルクス |
待合室・外来の廊下等 | 150~300ルクス |
トイレ・カルテ室等 | 75~150ルクス |
上記の照度基準を守らないと、業務に支障をきたす可能性があるため注意が必要です。
スタッフの作業効率が上がる
院内の照明が適切に選ばれ、配置されていると、場所ごとに適した明るさや視認性を確保できるため、医師やスタッフの作業効率向上を期待できます。
作業効率が高まることで、患者さん一人あたりにかかる時間を短縮でき、外来ではより多くの患者さんを受け入れられるようになります。また、病棟では浮いた時間を他の業務に回しやすくなります。
照明デザインで快適な空間づくりの演出ができる
照明は単に視認性を高めるだけでなく、心地良い明るさや色合いによって快適な空間を演出することもできます。
例えば、暖かみのあるオレンジ色の電球色を取り入れればリラックス効果が増し、待合室でのストレスや不安の軽減につながるでしょう。また、間接照明やダウンライトなどを活用することで、おしゃれな雰囲気を演出することもできます。
ランニングコストの削減になる
東京都環境局の資料によると、病院におけるエネルギー使用量の約25%を照明用電力が占めています。場所ごとに適した照明の設置や、LED照明器具の導入などの工夫を取り入れることで、病院のエネルギー消費量の多くを占める照明用電力を節約でき、ランニングコストの大幅な削減を期待できるでしょう。
実際、病院が設備投資をした省エネルギー対策のうち、照明設備は約49%と半数近くを占めており、省エネ対策に照明器具の適切な選定が必要不可欠であることが分かります。
≪照明の光源の種類≫
照明は、光源(自ら光を放つもの)によって複数の種類に区分されます。どの光源の照明を選ぶかによって特徴が異なるため、代表的な光源とその特性を確認しておきましょう。以下では照明の特徴を光源の種類ごとにまとめてみました。
<光源> | <特徴> |
白熱電球 |
|
蛍光灯 |
|
ハロゲンランプ |
|
LED |
|
近年では省エネ性や耐久性、安全性などの面からLEDを光源とする照明を利用する病院・クリニックが大半を占めています。
≪病院・クリニックで使用される照明器具の種類≫
照明器具にはさまざまな種類がありますが、病院・クリニックでよく用いられるものは大きく分けて4つあります。
シーリングライト
シーリングライトとは、天井に直接設置する照明器具のことです。全方向にまんべんなく光を拡散できるため、室内全体を明るく照らせるところが特徴です。
その性質上、メイン照明として使われることが多く、どの部屋でもシーリングライトに他の照明を組み合わせるのが一般的となっています。なお、シーリングライトは調光機能や調色機能付きのものが販売されており、用途やシーンに応じた使い分けも可能となっています。
ダウンライト
ダウンライトとは、天井に埋め込むタイプの照明器具です。光源が隠れるぶん、前述したシーリングライトとは異なり、照明器具の真下付近をピンポイントに照らす役割を果たします。
病院やクリニックでは、壁にかけた絵やオブジェなどをスポットライト風に照らすなど、雰囲気づくりに用いられるケースが多く見られます。また、入院病棟のある病院では、ベッドの上だけを照らす専用のダウンライトを設置し、同室の患者さんへのまぶしさに配慮するという工夫を取り入れているところもあるようです。
スポットライト
スポットライトは、特定の場所をピンポイントで照らせる照明器具です。前述したダウンライトは照明器具の真下のみを照らすのに特化していますが、スポットライトは照明の角度を変えられるため、狙った場所に照明を当てやすいという特徴があります。
また、天井だけでなく壁などにも設置できるため、用途や場所に合わせて自由自在に取り付けられるところも大きなメリットでしょう。なお、スポットライトは屋内用だけでなく屋外用も販売されており、クリニックの中には看板用の照明に用いているところもあります。
ペンダントライト
ペンダントライトとは、コードやチェーンなどで天井から吊り下げるタイプの照明器具です。シーリングライトに比べると高さがないため、ダウンライトやスポットライトのように特定の部分を照らすのに適しています。
一方で、シンプルなダウンライトやスポットライトに比べるとデザイン性が高いという特徴があり、それ自体がインテリアとして機能するところが利点です。病院・クリニックのコンセプトやテーマに合ったデザインの照明を取り入れれば、おしゃれ感やスタイリッシュ度が増し、他院との差別化を図れるでしょう。
≪病院・クリニックの照明設計の基本ポイント≫
病院・クリニックの照明設計を考える際に押さえておきたい基本的なポイントを3つご紹介します。
適切な照明の数や明るさを選ぶ
病院やクリニックにとって照明は重要な要素の一つですが、明るければ明るいほど良いというわけではありません。むしろ、明る過ぎる院内は患者さんに疲労感を与えたり、電力の過剰な消費につながったりする原因になるため、部屋ごとに適した照明の数、明るさを選ぶことが大切です。
例えば、手術室や処置室は誤診の防止や作業効率向上を考慮すると、できるだけ照度の高い照明を複数取り付けることが推奨されます。一方、待合室ではさほど細かな作業を行う必要はありませんし、患者さんが長く滞在する場所でもあるため、照度は低めにした方が良いでしょう。
なお、調光・調色機能の付いた照明を利用すれば、部屋ごとに適した照度に調整しやすくなります。
エリアによっては人感センサーを取り入れる
院内の照明用電力を抑えるためには、人感センサーを取り付けるのも有効な手段の一つです。特に人が常駐しないトイレや洗面所などは、人感センサーを取り付けて必要なときのみ点灯するようにすると、消費電力の節約につながります。
人感センサーは照明の自動オンだけでなく、人がいなくなったことを察知すると自動的に照明をオフにしてくれる機能も備えているため、利用後の消し忘れ防止にも役立ちます。
メンテナンスがしやすいものを選ぶ
病院・クリニックの照明を選ぶときは、メンテナンスの手間を考えることも大切です。汚れが付着しやすいものや目立ちやすいものを取り付けると、院内の衛生を保ちにくくなったり、見た目が悪くなったりする恐れがあるので注意が必要です。
近年ではホコリがたまりにくい構造や、凹凸の少ない照明器具も販売されているので、上手に取り入れることをおすすめします。また、照明の寿命が短いと頻繁に交換する必要があるため、LEDなど長寿命の光源を採用した方が良いでしょう。
≪まとめ:病院・クリニックの照明は場所や用途に合わせて慎重に選ぼう≫
病院やクリニックの照明は、院内の居心地の良さや作業効率、ランニングコストなどに大きな影響を及ぼす重要なポイントです。照明を適当に選んでしまうと、患者さんがリラックスできなかったり、作業効率が低下したりする原因となるので、JISで定められた照度基準などを参考にしつつ、場所や用途に応じた照明を導入しましょう。
エリアによっては人感センサーを取り入れたり、メンテナンスのしやすい照明器具を取り付けたりすると、コスト節約にもつながります。ただし、用途や目的に合わせて照明の種類や数、設置場所などを決めるのは難しいため、医療施設の内装工事に精通した業者に相談しながら設計することをおすすめします。
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