Category:お役立ち情報
心療内科で大切な内装デザインの要素とは
Category:お役立ち情報
心療内科で大切な内装デザインの要素とは
心療内科のクリニックには、「こころの病気」を抱えた患者様が来院します。そのため内装デザインにも、通常の診療科とは異なる工夫や配慮が求められます。
患者様のプライバシーを確保することはもちろん、症状を悪化させないため、リラックスできる診療環境を提供することが大切です。
この記事では、心療内科の内装デザインが患者様にもたらす影響や、内装デザインのポイント、エリア別に取り入れたい工夫を紹介します。
≪心療内科の内装デザインが患者様にもたらす影響≫
クリニックの内装デザインに配慮することは、患者様がリラックスできる診療環境を提供する上で欠かせません。
内装デザインは、視覚や聴覚、触覚などの五感を通じて、人の感情や心理状態に働きかけます。例えば、室内の照明の明るさや、家具の素材によって受ける印象が異なることは、科学的な研究からも分かっています。
特に心療内科では、内装デザインが患者様にもたらす影響が大きいため、工夫や配慮が必要です。心療内科が対象とするのは、うつ病や神経症などの「こころの病気」や、ストレスなどが原因で体に症状が現れる「心身症(胃潰瘍や気管支ぜんそくなど)」を抱える患者だからです(※)。
診療環境が劣悪な場合、患者様の不安や抑うつが増し、症状が悪化してしまうかもしれません。そのため心療内科には、患者様が安心感や居心地の良さを感じられるような内装デザインが求められます。
≪心療内科の内装デザインを考える4つのポイント≫
心療内科の内装デザインを考えるポイントは4つあります。
- ●患者様やご家族の安全対策を講じる
- ●患者様がリラックスできる空間にする
- ●患者様のプライバシーを確保する
- ●誰でも来院できるバリアフリー設計にする
患者様やご家族の安全対策を講じる
こころの病気の中には、急に感情のコントロールが難しくなったり、パニックになってしまったりするものもあります。患者様が激しい興奮状態にある場合、医療従事者数名で対応しなければならないケースがほとんどです。
そのため心療内科では、患者様の症状が急変した場合に備えて、他の患者様やご家族の安全対策を講じる必要があります。
例えば、診察室や待合室には、出入り口を2つ以上設けるとよいでしょう。万が一、患者様が暴れるような事態が起きても、近い方の出口から避難できます。スムーズに避難誘導できるよう、定期的に訓練を実施しておくことが大切です。
また安全対策の一環として、防犯カメラを設置するクリニックもあります。カメラの存在が気になる患者様もいるため、威圧感を与えないように設置場所を工夫しましょう。
患者様がリラックスできる空間にする
心療内科において理想的な診療環境は、患者様がリラックスし、安心・信頼を覚えるような環境です。
患者様がリラックスできる空間づくりのポイントは3つあります。
- ●壁紙や床に心が和らぐカラーを採用する
- ●音楽や芸術作品、自然を取り入れる
- ●間接照明で温かみのある空間を演出する
【壁紙や床に心が和らぐカラーを採用する】
クリニックの壁や床、天井には、心が和らぐ暖色系のカラーを採用しましょう。特にベージュやアイボリーなどの色は、人に安らぎをもたらす効果があるため、心療内科に適しています。
病院やクリニックというと、清潔感のあるホワイトをイメージするかもしれません。しかし、院内のカラーをホワイトに統一すると、患者様に緊張感を与えてしまいます。
またブルーやグレーなどの寒色系の色も、冷たい印象が感じられるため、心療内科とは相性が良くないと言われています。どうしても採用したい場合は、ワンポイントの差し色にするとよいでしょう。
【音楽や芸術作品、自然を取り入れる】
リラックスできる空間づくりには、音楽や芸術作品、自然などの要素も欠かせません。
待合室や診察室には、会話の妨げにならない程度の音量で、モーツアルトなどのクラシック音楽や、ヒーリングミュージックをかけるとよいでしょう。心療内科では、雑音や話し声に敏感な患者様も多いため、聴覚過敏への対策にもつながります。
また絵画や陶磁器などの芸術作品や、観葉植物などの自然も取り入れてみましょう。
特に都市環境で生活する現代人には、自然と触れ合いたいという欲求(バイオフィリア)が、生まれつき備わっていると言われています。季節ごとの植物や、水辺を演出するアクアリウムを設置することで、患者様の不安や抑うつを軽減できるでしょう。
クリニックによっては、犬や猫、鳥などの生き物を院内で飼育し、アニマルセラピーを実施する例もあります。
【間接照明で温かみのある空間を演出する】
院内の照明の明るさも、患者様の心理状態に大きな影響を及ぼします。
心療内科の場合、照明の明るさは抑えめに設定するとよいでしょう。医師と患者のコミュニケーションに支障がなく、相手の表情や顔色が分かる程度の明るさが理想的です。
また照明の種類は、光源が直接目に入らない間接照明か、オレンジがかった色合いの白熱灯がおすすめです。特に間接照明は、やさしく温かみのある空間を演出できます。
ただし、受付カウンターなどでは、カルテや書類に記入する作業のために明るい照明が必要です。院内のエリアによって、照明の色や明るさを変更しましょう。
患者様のプライバシーを確保する
心療内科には、自分の症状を他人に知られたくない方も多く来院します。できれば人知れず診察を受けたいという患者様がほとんどです。
そのためクリニックの内装デザインにも、患者様のプライバシーを確保するための工夫が求められます。
- ●患者様同士の視線が合いにくくする
- ●防音・吸音性能が高い内装材を採用する
【患者様同士の視線が合いにくくする】
待合室など、複数名の患者様が集まる場所では、お互いの視線が合いにくくなるようにレイアウトを工夫しましょう。
例えば、座席の間に衝立(ついたて)やパーテーションを設置すれば、患者同士の視線を遮ることが可能です。また待合室の窓から外を眺められるようにしたり、大型モニターを設置して映像を流したりすることで、互いに目を合わせずに済みます。
診察室が通路に面している場合は、外の視線や動きが気になる患者様もいます。窓際には必ずカーテンを取り付け、患者様のプライバシーを確保しましょう。
【防音・吸音性能が高い内装材を採用する】
壁や床の内装材には、できるだけ防音・吸音性能が高いものを採用しましょう。
例えば、クリニックの床材には、防音性の高いラバーフロアや、ビニル床シートが用いられることが一般的です。待合室や廊下など、患者様が行き交う場所では、騒音や話し声を吸収してくれる厚めのカーペットを敷くとよいでしょう。
また壁材も、防音性や遮音性を意識して選ぶことが大切です。特に診察室と待合室の間の壁は、患者様の個人情報が外部に漏れないように、しっかりと防音・遮音対策を行う必要があります。
誰でも来院できるバリアフリー設計にする
心療内科には、高齢者や車椅子の方が来院する場合もあります。入り口の段差をなくしたり、通路に手すりを設置したりと、アクセシビリティへの配慮も求められるでしょう。
バリアフリー法では、病院や診療所を含む特別特定建築物(注)に対し、建築物移動等円滑化基準に基づく努力義務を定めています。例えば、廊下の幅は車椅子の使用者とすれ違えるように1メートル以上確保、車椅子用のトイレは1箇所以上設置する、といったバリアフリー設計が必要です(※)。
注:不特定多数の者が利用し、または主として高齢者、障害者などが利用する建築物のこと(※)
※ 国土交通省 「国土交通省における建築物バリアフリー化の取組み」p2
≪【エリア別】心療内科の内装デザインの注意点≫
ここでは、心療内科における内装デザインの注意点を院内のエリア別に紹介します。
入口・受付
入口・受付は、心療内科に来院した患者様が最初に目にする場所です。次回以降も再来院してもらえるように、エントランスは清潔感があり、落ち着いた雰囲気の内装デザインにしましょう。
病院特有の臭いが気になる場合は、アロマポットやディフューザーの導入がおすすめです。アロマの心地よい香りで、来院した患者様の不安や緊張を和らげる効果も期待できます。
また心療内科では、患者様の個人情報などが外から見えないように、受付カウンターをやや高めにするとよいでしょう。
待合室
待合室は診察を待つ間、患者様が長い時間を過ごす場所です。
院内が多少混雑しても患者様が快適に過ごせるよう、広めの間取りにすることをおすすめします。また温かみのある間接照明や、ゆったりと腰掛けられるソファを設置し、快適性を高めましょう。
心療内科の患者様には、スタッフの話し声や、休憩中の物音などが気になる方もいます。待合室の近くに休憩室やバックヤードを設ける場合は、音が漏れないように工夫する必要があります。
診察室
心療内科の診察室は、患者様の不安や緊張が大きく高まる場所です。患者様が症状を打ち明けやすくなるように、安心感や居心地の良さを感じられる空間づくりが求められます。
診察室では、防音対策も欠かせません。診察中の会話が隣の部屋や待合室に聞こえないように、防音壁を採用するとよいでしょう。
また診察室と待合室の距離を開けたり、間に通路を設けたりと、間取りの面で工夫するのも効果的です。
トイレ
心療内科に来院する患者様は、臭いや汚れに敏感です。
特にトイレは臭いや汚れの原因となるため、こまめに清掃し、常に清潔な状態に保ちましょう。掃除の手間を考慮すると、防汚加工された壁材や、汚れを拭き取りやすい床材など、メンテナンスしやすい内装材を用いることをおすすめします。
≪まとめ:心療内科の内装デザインでは、デリケートな配慮や工夫が求められる≫
心療内科の内装デザインは、通常の診療科と異なり、デリケートな配慮や工夫が求められます。
患者様の症状がこれ以上悪化することがないように、緊張感や威圧感を与えかねない要素は、できるだけ取り除くことが大切です。
心が和らぐ暖色系のカラーや、温かみのある間接照明、芸術作品や自然などを取り入れ、患者様がリラックスできるクリニックを実現しましょう。